異文化勉強会


                   異文化勉強会

                                                 2015.9.2
                                  

                                               アルパインにて

                                      

92日例会の後、異文化ならぬ医文化の勉強会を行ないました。

「放射線が活躍する医療」と題して会員で東工大の名誉教授の小川雅生さんから伺ったお話の
概要は次のとおりです。

 放射線の発見から始まり、放射線が人体に及ぼす効果、放射線診断装置の仕組み、放射線を用いたガン治療についてご説明を受けました。

 

[お話の内容]

 (1)       放射線の発見

 189511月にドイツのレントゲンが、X線を発見した。驚いたことに、翌年の2月にはもう米国でX線が医療診断に使われました。

  図1

   X線の発見

 

 


(2)放射線の人体への影響

 放射線が人体に入ると電子が発生し、この電子がDNAを損傷する。大部分のDNAの損傷は自動的に修復される。しかし、完全に修復されない場合がある。

 X線撮影、X線CT,放射線治療などは、放射線被ばくするが、患者にとって病気を発見し、治療することに利益があるとしている。他方、患者の被ばくを極力少なくする努力がなされている。

 

(3)診断で活躍する放射線

(i) X線CT

ベッドに寝た患者は、ベッドごと回転する環の中を水平に移動する。環の中のX線管球からX線が照射され、環の反対側にあるX線検出器でX線画像得る。こうして得られた画像を、コンピュータで処理し、3次元の画像にする。

  

図2 XCTの仕組み

 

 

 

(ii) MRI

ベッドに横たえた患者を磁石で作った磁場の中に入れる。患者の体の水分子の水素原子核を共鳴させ、発生した電波を受信し画像にする。例えば、脳梗塞は、正常組織と状態が異なるため、電波が欠落する。それを検知し脳梗塞を判別する。

 図3 MRIの原理

 

 

 

iii)PET

放射性同位元素から放射されたポジトロン(正電荷をもつ電子)が電子と衝突すると、ガンマ線が放射される。

図3 PETの原理

 


    

 

この原理を利用して、PETでは放射性同位元素フッ素18F-18)を埋め込んだブドウ糖を患者に投与。ガン組織は、正常組織よりもブドウ糖を沢山取り込むので、F-18が埋め込まれたブドウ糖からガンマ線が放射され、それを検出することからガン組織の位置が分かる。

図6 PETの画像

     緑色部が腫瘍

 

 


 

       (4))放射線治療

(i) X線ビーム

小型の電子線加速器で加速した電子を金属に衝突させX線ビームを作る。このX線ビームを患部に集中させ、正常組織を極力損傷しないようにガン細胞を死滅させる。

 

(ii) 重荷電粒子ビーム

陽子あるいは炭素の荷電粒子を、大型加速器を用いて加速し、そのビームをガン組織に照射する治療法。重荷電粒子ビームは体内の目的とする深さに線量を集中させることができる。建設費が非常に高価で運転コストも高い。

 

(iii) 小線源治療

放射性のヨウ素125(半減期59日)を入れたチタン製カプセル(長さ4.5mm、太さ0.8mm)をガン組織の近くに挿入し、低エネルギーの電子を患部に照射することによってガンを治療する。

 

(5)まとめ

l  高齢者にとって放射線を用いた診断・治療は放射線被ばく以上の利益がある

l  CT装置の高速化に伴ってX線ビームが強くなり、被ばく線量率が増加している

l  MRI装置は高磁場化が進み、高周波電磁波の問題が気になりだした

l  PETはガン(腫瘍)の有無、位置を教えてくれる

l  X線ビームは中規模以上の病院に普及し、通院治療が行われている

l  重荷電粒子ビームは装置が非常に高価であり、先進医療に指定されている

l  小線源治療は前立腺や口腔など体表面に近い組織に有効である

 

                                     以上 

久しぶりの難しいお話に皆さん頭をフル回転させました。

   更に詳しく知りたい方は、http://oceangreen.jpにアクセスして下さい。